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新作『しみ』から読み解く、音楽になりたかった坂口恭平とその表現

全ての表現はもともと未分化だった

――最近の坂口さんは、今までにも増して物凄いスピードで作品を発表している印象を受けます。

そうね。ただ、ずーっと好き勝手に表現活動をしてきたとは思っていなくて。デビュー作の『0円ハウス』を書いたのが2004年でしょ。それから今まで本を出すってことをハイスピードでやってきて、テキストを書く力を蓄えてきているから今やれているんだと思う。

テキストじゃないけど、1番新しい作品としては鹿児島の「ISI PRESS」っていうインディペンデントの出版レーベルから『God is Paper』って画集を出した。今書いているのはまた新書。おそらく出版史上初の携帯電話番号がタイトルになっている本(笑)。

――普段から携帯電話番号を公表していますけど、今度は本のタイトルにしちゃうんですね(笑)。

「090-8106-4666」が俺の携帯電話番号なんだけど、今まではずっとネット上で「いのっちの電話」って名前で、死にたい人にかけてもらってきた。希死念慮にさいなまれている人も、俺との電話だったらトップギアで会話できるのに、普段はそうやって話せる仲間がいないみたいでさ。

これから、もっとしっかり自殺者ゼロに向けて行動していくためにも本を出す。なんてったって俺がいつも死にたいんだから、自殺しようとしている人を救うことが自分を救うことにも繋がるしね。

――そういった「自殺者ゼロ運動」や本の執筆活動以外にも、音楽家としても作品を発表していますね。

よく「幅広いジャンルを横断してすごい!」とか言われるんだけど、俺の中ではそんな意識ないんだよ。もともとみんな一緒だったわけだし、そもそも人間はいろんなものに興味を持つようにできているから、自然な行動としてやっているだけ。

――今はジャンルが細分化していますが、もともとは未分化だったと。

この前の『しみ』の出版イベントでは、トークの最中にいきなり歌も歌ったからね。だから、自分の中で表現による明確な線引ってなくて、俺はむしろ表現の中にグラデーションを作りたい。たとえば、今は言葉と歌が全く別物みたいに扱われているけど、もっと入り混じっているのが自然なんだと思う。

――お話を伺っていると、今後より坂口さんの活動は活発になりそうですね。

45歳ぐらいを1つの目安に捉えているんだよね。26歳のときに『0円ハウス』から始まってここまで来て、今後あと5〜6年でみんなの頭を全部ひっくり返す、麻薬のような作品を作りたいと思っている。だから、今は全ての表現を過程であり修行と捉えていて、1つの作品に関するインタビューとか受けても困っちゃうんだよね。

――逆に捉えると、45歳のときに目指していた作品を発表できたら表現活動をお休みする可能性もあるということでしょうか?

いや、それはないかな(笑)。自分の感覚を出していないと死にたくなるから、本当に死ぬまで何か作り続けると思う。もうプルーストみたいなもんだと思ってよ。

――安心しました。

それか俺は料理が得意だから、料理研究家の栗原はるみみたいになるかもしれない(笑)。得意料理? むっちゃ旨いナポリタン。

坂口恭平が影響を受けた音楽

Shuggie Ottis「Island Letter」

21歳の頃、デヴィッド・バーンみたいになりたいと思ってて、彼がやってるルアカ・バップレーベルには大きな影響を受けた。そのレーベルで見つけたShuggie Otisはソウルなのか宅録少年なのかアシッドフォークなのかよくわからない混ざり方しててかっこよかった。

Beck「『One Foot In The Grave』」

Kレーベルに憧れてて、今のぼくの音楽のつくりかたは、ほとんどこのアルバムを参考にしているような気がする。高校生のとき聴いてぶっとんだ。

John Cale & Terry Riley「Ides of March」

『しみ』を書きながら、当時聴いてたこの曲を、書き始める前に聴きながら、瞑想して書いた。この曲は、小説にも出てくるシーンだが、ぼくをソファに寝かせて、明日のDJ選曲をぼくに聴かせて試すDJの友人がいて、彼がかけて、ぼくは何時間も経ったと思ってたらたったの10分だった。

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