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不親切でメモリアルな音楽の旅|「unkind」レポート(後編)

10月2日、秋晴れの日曜日。東京から深夜バスで8時間、秋田県は藤里町にしかない5箇所のロケーションを舞台装置に、一風変わった野外フェス「unkind」が開催された。ひとつのステージで行われるライブはひとつだけ。観客は小学校の体育館をスタート地点に、滝、いちょうの木の下、河原、グラウンドなど自然の中を歩きながらライブを楽しむ。
「不親切」だからこそ思い出深いこのお祭りは、町全体を音楽という非日常に引き込んだ。この日、藤里町に何が起こったのか? 長い長い一日を写真家・黑田菜月のスナップとともに振り返る。

不親切でメモリアルな音楽の旅:「unkind」レポート(前編)はこちら

text_坂崎麻結 photo_黑田菜月

権現の大銀杏に響く、ZOMBIE-CHANGの刹那的ポップス

unkind LIVE:ZOMBIE-CHANG「TARINAI」

「どうもこんにちは、ZOMBIE-CHANGです」。

田中神社の隣、権現の大銀杏と呼ばれる樹齢300年以上のいちょうの木の下でZOMBIE-CHANGのライブがはじまった。いちょうの木を神に見立てて御堂(田中神社)が建てられたと言われており、どこか神聖な気配が漂うステージだ。

大銀杏に挨拶をするZOMBIE-CHANG。
樹齢300年の大銀杏の下で歌うZOMBIE-CHANG。だんだん精霊に見えてくる。

「WASURETA」、「GOODBYE MY LOVE AND TURN AROUND」、「LEMONADE」と、まず立て続けに3曲を披露。印象的なメロディとリズミカルな電子音、思わず聞き入ってしまうどこか刹那的な歌詞世界は、両極にあるものが混ざっているような違和感がドキドキさせる。本人のキャラクターもつかみどころがなく、急に遠くへ行ってしまいそうな儚さは思春期の少女のよう。低音と高音のギャップ、声量はあるけれど抑揚を抑えたクールな歌い方も魅力的だ。

「目が覚めて気がついたときはもう遅かった」「マイクロフォンから流れ出すメロディと共に死す」「悲しみを越えればあなたに会えるはず」「どこへも行けない」など、切なさの匂う歌詞はいつまでも耳に残る。

 

「去年の夏からずっとカメムシが、家の壁の同じ位置にずっとはりついているんですけど、その子のことをカメくんと呼んでいます。なんでいなくならないんでしょうかね。じゃあ、夏は終わっちゃったんですけど、サマータイムという曲を聴いてください!」。

いつも曲の合間の喋りが面白いので、ラジオや音楽番組のMCにも向いているのでは? 独特なテンションで笑わせていたZOMBIE-CHANG。

「サマータイム」、「I CAN’T GET ENOUGH」、「恋のバカンス」を披露したあと、閉店ソング(蛍の光、別れのワルツ)を流しながら終了。この日は「LEMONADE」の冒頭でもレモネードのレシピのナレーションを流したりと、声ネタをうまく使っていたのも印象的だった。

お客さんは体育座りでライブを楽しんだ。
森に囲まれて歌うZOMBIE-CHANG。管に繋がれた機材と自然の不思議なコントラスト。

 

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