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レーベルのやることが「音楽」だけって、面白い? OMAKE CLUB流、垣根のないレーベルの作り方

JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB(以下、JABBA)、中小企業、MCperoなど、良質でフレッシュなヒップホップアーティストを中心にラインナップするレーベル・OMAKE CLUB。
「ミュージシャンの、ミュージシャンによる、ミュージシャンのための、著作権フリーのインターネット踏み台レーベル」を掲げ、サイト上でいくつかの音源を無料で公開したり、レーベル立ち上げのメンバーであるTOKYO HELTH CLUB(以下、THC)が昨年ManhattanRecordsへと移籍したり(!)と、ユニークな動きで界隈を撹乱している。
そのOMAKE CLUBのブレーンが、THCのDJでもあるTSUBAME氏。今やフィメールアイコンとして定着したZONBIE-CHANGを見出した人物でもある。4月1日に久々の自主企画イベント「OMAKEのイベント」を控えた彼に、今改めてOMAKE CLUBの信念と展望を伺う。

text&edit_奥村健太郎 photo_谷浦龍一

ノリの活動から多くのアーティストが所属するレーベルへ

——TOKYO HEALTH CLUBのDJとして活動をしながらも、レーベルヘッドを務めるTSUBAMEさんですが、そもそも、なぜOMAKE CLUBを作ったのでしょうか?

THCって、最初は完全にノリだけでやってたんですよ。でも2011年くらいに、とあるきっかけから「月に1曲も作らないようなペースで活動して、やる意味あんのか?」って疑問が出てきて。それで、僕がメンバーに対して、「やるのか、やらないのか。やるなら本気で動こう」って問いたら、本気で動くことになった。しっかり活動するのであれば、その指針として、まずはCDを出さないといけない。CDを出すためにはレーベルが必要だから…という感じで、最初は完全に「THCの活動のためのレーベル」としてスタートしました。

CITY GIRL / TOKYO HEALTH CLUB official MV

——そこから、THC以外のアーティストが所属するようになった理由は?

上から目線に聞こえるかもしれませんが、ライブで色んな人と会っていくうちに、「もっとちゃんとやれば絶対人気が出るのに。才能がもったいない」と感じる人たちをサポートしたくなったんです。OMAKE CLUBに引き込んで、キッチリさせてあげたいって。

——「キッチリさせる」とは?

CDを出す、ということです。やっぱり、ネット上にフリーで音源を出しているより、音源が全国に流通しているほうが大人の人には「ちゃんとしてるな」と思ってもらえる。モノに落とし込んでいるほうが「実績」として機能する。

——それでも、OMAKE CLUBは「フリーダウンロードミュージックレーベル」というコンセプトを掲げていて、サイトからかなりの量の曲を無料でダウンロードできますよね。

はい。でも、これはプロモーションの一環です。だって、無名のインディーズ・アーティストなんて、わざわざお金を出して聞かないじゃないですか。その状態でどうやって聞いてもらうかを考えた時に、少なくとも僕は「タダだったら聴くかも」と思ったんです。とりあえず聞いてもらう第一歩として、2~3曲を無料で公開する。ちゃんと聴いてもらう時にはアルバムとしてリリースして、その時にはしっかりとした値段をつけよう、っていう。

——また、OMAKE CLUBではMVの制作本数も多いですが、MVにはどのような役割を?

単純に「1曲聞いてもらうための、リッチなツール」ですね。MVの場合は聴覚に加えて視覚でもアプローチできるから、そのアーティストの世界観を深く伝えることができる。音楽だけだと本当に好きな人以外に聞いてもらうのは難しいけど、”映像が好き”という角度から入る人も考えられるので、曲だけよりもパイが大きいのがいいですよね。僕らの周りにはCMや WEB、映像など、何かしらのクリエイティブに関わっている人がたくさんいるので、インディーズなのに低予算で高いクオリティの成果物を作れるんです。うちに所属する魅力の8割はこれじゃないかな(笑)。

アーティストの本音を聞き出す“小言おじさん”

——それでは、OMAKE CLUBでのTSUBAMEさんの役割を教えてください。

“小言おじさん”ですね、完全に(笑)。アーティストに「こういうアルバム作るべきじゃない?」って小言を言ったり、逆にアーティストの意見に対して「本当にそれがしたいの?」って問い続ける。そうやってでてきた本心や将来像に対して、OMAKE CLUBがサポートできる範囲で、どんなステップを踏んでいくべきかを提案する。例えば、「どんなPV作りたいか」「どんな人に撮ってほしいか」と聞き出すことは毎回のようにしているし、音楽に関しても「今はこんな曲を作っているけど、こんな曲があっても素敵じゃない?」って、ひたすら聞いていったり。

——プロデュース業のようなものなのでしょうか?

そうですね。…いや、プロデュースというとおこがましいかな。裏方で動く手助けおっさんです(笑)。

——THCの中でも役割は同じですか?

変わりません。僕以外の3人は、好きなことにまっすぐ向かっていくタイプなので、あまり外に向かないというか、ビジネスコミュ障なんですよね(笑)。THCで唯一、“大人とちゃんとした話ができる人間”、つまりビジネス的な観点をもって音楽の話ができるのが僕ぐらいしかいないんです。「いくらで、どう売っていこうか」という話とかね。

——その視点やスキルはどうやって培われたのですか?

某広告代理店でずっと仕事をしてきたから、というのもありますが、そもそものきっかけは、僕が20歳くらいのときに「ROC TRAX」というDEXPISTOLSさん(以下、DEX)が主催していたレーベルに所属して活動していたことがあって。あの頃の四つ打ちの界隈って、若い世代が前に出づらい状況だったんです。DEXのお二人は、そんな中で積極的に若い人たちをフックアップして盛り上げていこうとする流れを作っていた。それを見ていたので、僕もいつかこういうことができたらいいなと思ってたんです。

音楽を楽しむために他の仕事で稼いで何が悪い?

——OMAKE CLUBの特徴として、所属アーティストが「音楽の他に別のお仕事をもっている」という点が大きいと思います。そこであえて聞きたいのですが、「OMAKE CLUBだけ=音楽の仕事だけで食っていくぞ」という気持ちをもったことはありますか?

全くないです(笑)。「ミュージシャンなら音楽一本で」じゃなくて、「音楽を楽しむために他の仕事で稼いで何が悪いの?」って気持ちなんですよね。だって、「俺はこれで行くんだ!」って必死になったら「売れなきゃダメ」って考えに行き着いてしまって、結局楽しむ余裕がなくなりそうじゃないですか。そういう意味では「本気で音楽をやりたい人」にとって、ウチは魅力的なレーベルではないのかもしれないですね。

——では仮に、高校を辞めて音楽をやるぞ! っていう意気込みをもった子が「OMAKE CLUBが好きです! 俺を本気で売ってください!」と連絡をしてきた。しかもその子の音楽が良かった場合、どういう育て方をしますか?

まず「じゃあバイトしてくれる?」って言いますね(笑)。その代わり、その子がメシを食えるようになるまでは僕らも頑張るよ、と。実は、今の話にすごく近しいのが、ZOMBIE-CHANGだったんですよ。彼女は音楽で食っていきたいと思っていて、ちゃんとバイトもしていた。「OMAKE CLUBが好きなんです!」という感じでは全くなかったけど(笑)、僕がライブを見てそのパフォーマンスに一目惚れしたんですね。めちゃくちゃ面白い子なのに、お客さんが4人くらいしかいなかった。即、ツイッターで「一回話しませんか」って連絡しました。あの時は絶対人気にする、ウチを踏み台にしてステージまで上げてあげようって思っていましたね。

ZOMBIE-CHANG「I CAN’T GET TO SLEEP」

——アーティストからすればとても嬉しいことですよね。

でも、いきなり知らないおじさんからTwitterで連絡がくるって、めちゃくちゃ怖くないですか?(笑)。今では彼女の魅力に気づく人が増えて、「NYLON」や「GINZA」のようなファッション誌の表紙になったりと、売れっ子ですよね。そこまで羽ばたいてくれたことが単純に嬉しいです。彼女がレーベルを抜けた時に、初めて「所属してたアーティストが離れるって寂しいんだな」って思いました。…僕らもOMAKEには所属してないけど(笑)。(※現在ZOMBIE-CHANGはbayon records、THCはManhattanRecordsに所属している)

——そこも、OMAKE CLUBの面白いところですよね。

ROC TRAXに所属している時、快速東京(※TSUBAME氏と快速東京のメンバーは同世代)が自分たちであらゆるクリエイティブをコントロールしているのを見て、すごく楽しそうだなって思ったんです。どこにも所属せずに、ただただ自分たちで生み出している状態が羨ましかった。集団で活動するメリットはあるけど、逆に言えば何をしても“ROC TRAXの”という見え方になってしまって、少し動きづらさを感じることもあったんですよね。特にあの頃はDEXはもちろん、クルーとしても規模がどんどん大きくなっていった頃だったし。
そういう経験もあって、OMAKE CLUBでは「(アーティストは)いつ抜けててもいいし、いつ入ってもいい」という方針なんです。親玉みたいな存在や、しがらみのないレーベルです。

——アーティスト側から見た“OMAKE CLUBに所属する魅力”という話でいうと、レーベルメイトがいることで、個ではなく集団=クルーとして見える点も、アーティストにとってのメリットになりそうですね。

まさにその通りです。やっぱり、とんでもない才能がない限りは、個人で「かっこいい」と思えるレベルまでは到達するのは難しいんですよね。その分、集団だと個ではなくチームとして捉えられるので、個で勝負するよりもかっこよく見えやすいし、同じレーベルのアーティストなら他の人も聞いてみようという気持ちも働きますよね。Amazonの「この商品を見た人は~」(※サジェスチョン機能)みたいな(笑)。THCが好きならJABBAも好きかもしれないし、JABBAが好きなら中小企業も、YOSAも好きかも…という感じで、どんどん繋がっていく可能性がある。

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