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〈連載〉たかくらかずきのベストヒットMV 第1回

ドット絵などのデジタル表現を軸に、WEBやMV、ゲームなどの領域でのビジュアルワーク、また近年では劇団「範宙遊泳」のアートディレクター・舞台脚本を担当し、2016年からは「スタジオ常世」の名でゲーム『摩尼遊戯TOKOYO』を開発中のイラストレーター・たかくらかずきによる連載。

text_Kazuki Takakura edit_Kentaro Okumura

こんにちは。イラストレーターのたかくらかずきです。イラストレーターといっても、紙媒体よりも、デジタル画像を中心としたWEBページやゲーム、映像のイラストを制作することが多いです。

「むかしの化石」 2016年

 

「山越天孫来迎図(下のレイヤーに結合)」 2016年

 

「現世再復涅槃図(上のレイヤーに結合)」 2016年

映像と音楽の、表現と商業のあいだで進化してきたMV

この仕事をやりはじめたきっかけのひとつとして、ミュージックビデオ(MV)との出会いがありました。ちょうど高校生くらいのころ(2004〜06年くらい。YouTubeが世に出たのが2005年ごろ)に出会った、ミッシェル・ゴンドリーやスパイク・ジョーンズの作ったMVたち。こんなに短い時間にアイデアがたくさん詰め込まれていて、美しくて、楽しい!しかも音楽ともぴったり合っている。それぞれの曲の中に詰め込まれたアイデアに、とても心躍らされたのを覚えています。

Lucas「Lucas with the lid off」(監督 ミシェル・ゴンドリー)
Fatboy Slim「Weapon Of Choice」(監督 スパイク・ジョーンズ)

それから10年以上経った今も、MVはインターネットで音楽を楽しむコンテンツとして大きな役割を担っています。国外ではMVという名でずっと親しまれてきましたが、90〜00年代、まだインターネット黎明期の日本におけるMVは「PV(プロモーションビデオ)」と呼ばれるのが主流でした。映像技術が一般化されてから今まで、MV/PVは音楽が主役であるにもかかわらず、常に新たな映像表現を更新し、それはいまだに続いています。

そんなわけで、この連載では僕がリアルタイムで体験していないMVのはじまりから、僕が影響を受けたMV、そして現在進行形で変化するMVの最新形態まで、「映像のアイデア」という個人的な目線で切り取り、時代を追ってピックアップしてみようと思います。

音楽史でもなければ、映像史でもない。映像と音楽の狭間で、表現と商業のあいだで進化してきたMVというコンテンツを超個人的な視点で切り取る、オリジナルのMVの地図になればと思います。願わくばこの連載が終わる頃には、この先のデジタルコンテンツの進化のヒントがうっすらと見えてくるといいなぁと思っています。

60〜80年代|実験的表現方法が、音楽に乗ってお茶の間へ

Bob Dylan「Subterranean Homesick Blues」

MVの始まりはビートルズやボブディランだと言われています。当時は歌っている本人が映っているだけで、たいそう感動的なものだったのでしょう。ボブディランのこのMVは特徴的で、映像によって歌詞をリアルタイムに可視化する、という機能が付随されています。現代でいう「リリックビデオ」ですね。

BEATLES「Strawberry Fields Forever」

ビートルズの「Strawberry Fields Forever」は逆再生を利用して、非現実的な物語世界の断片を描いています。MVと時を同じくして60年代に現代美術界に登場した「ビデオ・アート」の世界や、実験映画ではよく使われていた特殊な技法や不条理なイメージの世界も、音楽に乗せることで誰もが親しめるものになる。これはMVの大きな特徴と言えます。(これはショートverのデジタルリマスター版しかなかったのでそれを貼りました)

FRANK ZAPPA「BABY SNAKES」

MVはビデオアートや実験映画のニッチな技法を飲み込みつつ、各ミュージシャンの音楽性に寄り添い、様々な方向に進化していきます。フランク・ザッパ 「BABY SNAKES」のMVは、彼らのツアーを追った同名のドキュメンタリー映画(1979年公開)用の楽曲。ドキュメンタリー内では、このMVの制作過程として、クレイアニメを制作しているアニメーター・ブルースビックフォードとザッパのやりとりが出てきます。

Talking Heads「Once In A Lifetime」

80年代のブラウン管的/ビデオ的なノイズを大いに取り入れた映像。今でいうデジタルデータの「グリッチ」や「ネット的」と言われるような、デジタル特有のノイズをテクスチャーとして使用しています。デジタル表現は時代とともに撮影機材、編集機材、特殊効果、表示媒体など常に変化していくので、その時代を表すノイズのテクスチャーがあります。

Peter Gabriel「Sledgehammer」

ストップモーション、逆再生、ドキュメンタリー、ビデオノイズ。きっといままでは実験映画やアートの狭い世界でしか見せることのできなかった多種多様な映像表現が、音楽に乗ってお茶の間に流れ出す。MVの歴史はきっとそんな衝撃とともに始まったのではないでしょうか。「音楽がアートと商業を映像というツールでつなぐ」というこの構図は、90年代に入るとさらに加速していきます。次回は僕が直接的に影響を受けた90年代〜00年代のMVと、活躍した映像作家・ディレクターたちに注目してみたいと思います。

Profile

たかくらかずき

Illustrator/Artist/Gamecreator

ドット絵やデジタル表現をベースとしたイラストで、音楽、CM、書籍、WEBなどのイラストや動画を制作。劇団『範宙遊泳』ではアートディレクターを担当。『宇宙冒険記6D』で初の脚本を担当した。pixiv zingaroにてグループ展『ピクセルアウト』を企画/主催。2016年より『スタジオ常世』の名でゲーム開発を開始、『摩尼遊戯TOKOYO』を開発中。

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