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作品をつくる音 #04 TYM344(美術家/漫画家)の場合

作品制作のかたわらには、よく音楽が存在する。徹夜明けのモニターから、制作中のイヤホンの中から流れ込み、思わず匙を投げそうになる瞬間には、そのあと一歩を進める追い風になる。「作品をつくる音」は、アーティストが各作品の制作中に聞いていた楽曲を紹介する、リレー形式の企画。今回登場するのは、「絵を描くこととは、決定された画像をつくること」として、二値化された非・動画的な絵画を目指す美術家/漫画家・TYM344。

text_TYM344 edit_Kentaro Okumura photo(header)_Ryo Ozawa

「大通り3(アイ)|Boulevard 3(Ai)」をつくった音

「大通り3(アイ)|Boulevard 3(Ai)」/キャンバスにアクリル/53x53cm/2016年
Sonic Youth「Kool Thing」

Sonic Youthはよく聴きますが、その中でも特に好きな曲です。Sonic Youthはインタビューで、「その都度ルールをつくってやることで逆に創造性を確保する」というような発言をしていて、私の制作における「二値化絵画」という考えを組み立てるときに、Sonic Youthのこういう考え方にはとても影響を受けました。

また、Sonic Youthは「ギター/ベース/ドラム/ボーカル」といった伝統的なバンドミュージックの形式をとってはいるものの、曲のつくり方・壊し方やその後のポスト・ロック化等を見ると、バンドミュージックに対する冷たく客観的な視線も感じられて、この主客入り混じるあり方はアートに近い気がします。

マイク・ケリーやゲルハルト・リヒターなどのアーティストがアルバムのアートワークを手がけるなど、実際アートとの距離が近いバンドです。今回はじめてこの曲のビデオを観ましたが、明らかに60年代のNYを想起させる演出ですね。

「十分に飲んだ(逃走としての鷲)|Drank Enough(Eagle As a Getaway)」をつくった音

「十分に飲んだ(逃走としての鷲)|Drank Enough(Eagle As a Getaway)」/キャンバスにアクリル/91×65.2cm/2016年
808 State「Cubik」

知らない方のためにすごく雑に説明すると、808 Stateは、UK・マンチェスターのエレクトロニックシーンにおいて、New OrderとThe Chemical Brothersの間の時期にいるようなバンドと言われています。

ただ、上記であげたバンドよりも、使うコードが独特で、アレンジの引き出しも豊か。

なので、私は上記の立ち位置で捉えるよりも、国は違えど「YMOの散開後の仕事を偶然にも引き継いでしまったバンド」と考えたら面白いんじゃないかなあと思っています。この曲は特にバカバカしく、しかしドラムマシンの音がグッと締まったクールな曲。

「カタログ-ギフト|Catalog-Gift」をつくった音

「カタログ-ギフト|Catalog-Gift」/壁にアクリル/200x600cm/2017年
Factory Floor「Ya」

私のこの作品「カタログ-ギフト」は、銀座の廃ビルで行ったHouxoQue氏主催の「GINZA 24H SQUAD」に出展した作品です。

壁画だったので、会場の廃ビル内の壁に向かって延々と作業し、眠くなったら寝て、疲れたら積み上げたウィダーを飲み…というのを昼夜関係なく続けていました。こうして絵の前にずっといると、細かい自我が消えていって、自分が作品に仕えているような気分になるし、まあ実際のところ作家はそんなようなものです。

NYはDFA Recordsのインダストリアルバンド・Factory Floorの「Ya」は、控えめな展開ととんでもない音圧によって、ただただ時間を刻んでいく曲で、果てのない壁画制作のBGMになっていました。

この、まったく気の入っていない「Ya」が気に入っています。脱力していて感情も無いけど、しかし「Ya」ではある。いつも思うのですが、作品がうまく完成するときは、面倒なしがらみや理論・思想、自分の感情など、あらゆるごちゃごちゃの真ん中をぜーんぶ突き通し抜いて、「Ya」が出たとき、であるような気がします。

「『HARD/SOFT』シリーズ|“HARD/SOFT” series」をつくった音

「『HARD/SOFT』シリーズ|“HARD/SOFT” series」/木板にアクリル/30x30cm/2017年
Holy Fuck「Xed Eyes」

この作品は、高円寺のギャラリー・ナオナカムラで開催中(2017年7月1日〜7月31日)の個展「HARD/SOFT」にて発表しているシリーズの一部です。私が描くキャラクターのイメージを数百のピースに分割したものをモチーフにして描いています。

トロントのバンド・Holy Fuckは色んな音を集めてその場で加工してセッションし、ポップミュージックに似て非なる目的不明に振り切れた曲をつくるバンドです。最近、制作中によく聴いている音楽の一つです。今回の私の作品たちは、彼らの曲作りとちょうど真逆の方法で作られているかもしれません。

【バトンを繋ぐアーティスト】

林 千歩(アーティスト)

Profile

TYM344(ティー・ワイ・エム・スリー・フォー・フォー)

美術家、漫画家。

「絵を描くこととは、決定された画像をつくること」として、道路標識から秩父連山まであらゆる不動物を手本にして、二値化された非・動画的な絵画を目指す。2017年7月に「ナオナカムラ」にて2つの個展『HARD/SOFT』『NEVER UNDERSTAND』を開催。

https://twitter.com/tym344
http://toyama34shi.wixsite.com/tym344

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