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村田シゲ×川崎亘一:□□□とバンアパ、コラボによってより自由になった「音」との関わり方

3人組ポップ・ユニット□□□(クチロロ)が、前作から3年ぶりとなる6曲入りミニ・アルバム『前へ』を、the band apart(以下バンアパ)が運営するレーベル〈asian gothic label〉から昨年10月にリリースした。本作は、バンアパのメンバー全員を“ボーカリスト”としてフィーチャーした異色のコラボ・アルバム。バンアパの名曲「Eric.W」をバックにいとうせいこうがラップしたり、川崎亘一がエレキギター1本で弾き語りをしたりと、これまでの□□□やバンアパの作品にはなかった新たなサウンドスケープが広がっている。 そもそも、このコラボはどのようにして誕生したのだろうか。「永遠に音源を出さなくてもいい」とまで公言していた三浦康嗣が、今回重い腰を上げた理由とは?レーベルの主宰者であり、バンアパのギタリスト・川崎亘一と、□□□のベーシスト・村田シゲに話を訊いた。

text_黒田隆憲  edit_奥村健太郎  photo_山口雄太郎

セッションの延長にある、パズルのような楽曲制作

——今回のコラボは、村田さんと川崎さんが言い出したそうですが、お二人の交流が始まったキッカケは?

村田シゲ(以下、シゲ):以前、□□□が富山のイベントに呼ばれたことがあって、その時いとうせいこうのスケジュールが合わなかったんですね。僕と三浦だけで行っても、きっと動員がとんでもないことになるなと(笑)。で、名前がそれなりに売れてて、動員を埋めてくれそうなゲストを呼ぼうってことになったんです。

川崎亘一(以下、川崎):そんな理由(笑)。

シゲ:真っ先に思い浮かんだのが、蓮沼執太と環ROY。「あと、ドラムスとギターをどうしよう?」ってなって、会えば挨拶する程度の間柄だったバンアパの木暮(栄一)と川崎に、ダメ元で連絡してみたんです。そうしたら2人に快諾してもらって。そこから本格的な交流が始まりましたね。

川崎:イベントの打ち上げで、かなり意気投合して仲良くなったんだよね。音楽の話とかほとんどしたことないんですけど。

——どんなところに魅力を感じたのでしょう。

川崎:それまでの□□□のイメージは、「すっげえ細かくてめんどくさい音楽集団」って感じだったんですよ(笑)。だからちょっと敬遠してたところもあったんですけど、何回かリハーサルを重ねていくうちに、ものすごいテキトーな人間の集まりだっていうことがわかって。

シゲ:あはははは。

□□□ 村田シゲ(写真左)とthe band apart 川崎亘一(右)

川崎:スタジオでセッションしてても、「あ、それいいじゃんOK、OK!」って、すごく自由で伸び伸びとしてて。どちらかというとバンアパは、カッチリと音楽を作るタイプのバンドだったから、そんな□□□の雰囲気がものすごく新鮮だったんですよね。初対面でいきなりケンカし始めたり(笑)、彼らと一緒にいると自分でもびっくりするようなことが起こる。

——三浦さんは常日頃、「(□□□としての音源は)できれば永遠に出さないっていうのもあり」と公言していましたが、それがどう変わっていったのでしょうか。

シゲ:本人が何て言うか分からないですけど、彼は天才であり革命家なんで、「音源は出さない!」って言いたいんだと思います。なので、何かしら自分の中で納得する理由や動機さえあれば、いつでも(□□□としての活動を)始めるつもりじゃなかったのかなと。こだわりがあるようで実は全然なかったりもするし(笑)。

——本作『前へ』に収録された6曲のうち4曲は、バンアパのメンバー全員が、曲ごとにボーカリストとしてフィーチャーされていて驚きました。

シゲ:最初の打ち合わせで、どこからともなく出てきたアイデアです。でも結果的に、普段は歌わないメンバーが戸惑いながら歌っている様子を一番楽しんでたのは三浦さんでしたね。特に川崎さんをフィーチャーした、「スニーカー」という曲を録っている時の彼は、今風にいうと「テンアゲ」状態(笑)。コラボという形も、三浦さんのモチベーションを上げる要因となったのかも。

川崎:本当にイヤでしたよ(笑)。俺以外のメンバー全員が、「やろう」ってなっても、最後まで抵抗していました。しかもスタジオへ行ったら、遅れて入ってきた三浦の一言目が「もう曲できた?」でしたから。意味わかんないじゃないですか。「いやいや、あんたが作るんでしょ」って(苦笑)。常にそんな調子なんですよね。

——(笑)。実際の曲作りやレコーディングは、どのように進んでいきましたか?

シゲ:「エレキギターの弾き語り」という形が決まった時に、真っ先に僕の頭に浮かんだのがジェフ・バックリーの「ハレルヤ」だったんですよ。そのアイデアを三浦さんに伝えて、具現化してもらいました。当日のレコーディングでは、川崎さんにジェフ・バックリーの動画を見せて、「こんな感じで弾いて」って。

川崎:そんな、伝説のアーティストの名演なんて、いきなり見せられてできるわけないじゃないですか。

シゲ:(笑)。そうやって追い込んで、結果、みんなの持ち味を引き出しているっていう。三浦さんがそれを、どこまで意図的にやっているのかは分からないですけど、彼らとしては「引き出されてしまった」と言わざるを得ないですね。ハハハ。

——基本的には三浦さんがお題をふって、それに沿ってバンアパが演奏した素材を持ち帰り、それを再構築したトラックの上にヴォーカルを乗せてから、再びミックスダウンし直す、という作業だったんですよね?

シゲ:「スニーカー」は弾き語りですが、他のメンバーが歌った曲に関してはそうです。あと、僕が大好きなバンアパの名曲「Eric.W」を再録して、その上にいとうせいこうのラップが乗る、もう「全部乗せ」みたいな楽曲(「お前次第ってことさ」)や、唯一バンアパをフィーチャーしていない、三浦だけで作り上げた「あいまい」という曲もあります。この曲は映画のエンドロールみたいなイメージで、実質的には□□□の新音源と言えるでしょうね。ハハハ。

——当初はサビだったはずの素材が、別曲のイントロに差し替えられていたり、コード進行がガラッと変わっていたりすることもあるわけですよね。

シゲ:まさにそう。パズルのような作り方ですよね。なので自分がベースを弾くときも、素材を提供しているような感覚があります。実は「あいまい」も、マスタリングの段階になって出てきた曲なんですよ。そこで全員が初めて聴くっていう(笑)。□□□に加入した当初は、そういう三浦さんのやり方に戸惑ったこともあったんですけど、もうそれが当たり前というか。そこが彼の魅力でありユニークさであったりもしますからね。

次のページ曲はライブをするためのものであり、「日記」のようなもの

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