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角打ち ON THE CORNER|mantaschool (a.k.a MC.sirafu)

ザ・なつやすみバンドや片想いのメンバーであり、ceroをはじめ数々のサポートでも知られるミュージシャンMC.sirafuことmantaschool。彼は東京近郊を中心に各地の「角打ち」を巡るマニアとして知る人ぞ知る存在だ。そんなmantaschoolが、愛してやまない角打ちの銘店を自ら訪れ取材し、その楽しみ方を伝えていくハシゴ酒コラム!

text_mantaschool (a.k.a MC.sirafu)  photo_Manabu Numata  edit_Takeshi Miyauchi

「角打ち」というワードが最近なんだかちと流行ってる気がする。目にする機会も多い。

「かどうち行きましょうよ!」とか言われて、読み方間違ってるよ、「かくうち」って言うんだよ。とか、わざわざ訂正するのもめんどくさいくらい、世の中に「角打ち」という言葉があふれてる気がする(そんなことないか)。

簡単に説明すると、「角打ち」はあくまで酒屋さんである。酒屋に入って、冷蔵庫から発泡酒を手に取り、百数十円払って、その場で呑む。あてが欲しけりゃ、店内の缶詰とか乾きものがある。古い作りのカウンターもしくは、ビールケースで簡易的に作られたテーブルにそれを広げりゃあ、ほら、今から君とだって呑めるよ。

ただそれだけの話だ。

だけど僕はそれだけで嬉しい。別に貧乏性とかそんなのではない。でも嬉しいのだ、なんでだ。そこで、ちとその理由を考えてみようと思う。案ずるより呑むが易し。ちと近所で角を打ってきますね。ご一緒しますか?

墨田区側から吾妻橋を渡ると、向こう岸に「電気ブラン」と書かれたいい感じの看板が

一軒目 四方酒店(よもさけてん)

自宅の墨田区から浅草まで徒歩20分強。アサヒビールの例のビルを横目に吾妻橋で隅田川を渡ると、もうそこは台東区雷門。

でも待って! 対岸にそびえたつ建物に「四方酒店」の古い看板があるのを見逃しちゃいけない。「電気ブラン」の文字が「もちろん呑んでくよね?」という意味に見える。実は浅草の入り口に角打ちがあるのですよ。まずはここで一杯引っ掛けてきましょう。そう、酒を「引っ掛ける」のです。

吾妻橋を渡って1つ目の角を曲がったすぐのところに店はある
日本酒も有料試飲という形で1杯ずつ呑める

昔、浅草には酒屋がやってる「立ち呑み」がたくさんあったそう。「四方酒店」の先代曰く「酒屋で1、2杯引っ掛けてから、あちこちに繰り出す。そういう場所」。「呑む」んじゃなくてあくまで「引っ掛ける」。

なるほど、と頷きながら、東京の東側に住んでてもあまりお見受けしない、ホッピービバレッジのレモンサワーを焼酎と混ぜる。

ホッピービバレッジのレモンサワーと宝焼酎(25度)のセット。320円
紙コップを渡されるので、自分の好きな分量でレモンハイを作る

自宅から近いという理由、そして午前中からやっている!(意外と東京の角打ちは昼呑みできる場所が少ない。それはあくまで酒屋としての業務が優先される理由があるから。そのことについてはいずれ……)ということを差し置いても、ここは僕にとって大切な場所だ。

ビールケースを重ねて作ったテーブルで、酒に囲まれながら呑む

「引っ掛ける」という行為は次の店へ行く理由でなくてもいい。アイデアに思い詰まった時、場面を変えたい時、大好きな人に会う前に緊張をほぐしたい時。なんでもよいのだ。次のコーナーへ向かう理由をここは受け入れてくれる場所。

おっと、ちと長居し過ぎた。次へ行きましょうか。

四方酒店
住所:東京都台東区雷門2-1-14
電話:03-3844-0679
営業時間:月~土曜10:00~19:30
休業日:日曜

吾妻橋のたもとで昭和30年より店を構える酒販店。角打ち営業を新たにはじめたのは5年ほど前から。近隣に勤める会社員はもちろん、女性客も多い。日本酒や焼酎からシャンパン、電気ブランまで、店内にある酒はすべて希望小売価格で飲むことができる。花見や祭のシーズンは日曜も営業するそう。

二軒目 上野萬屋酒舗(うえのよろずやしゅほ)

四方酒店から20分ほど散歩しましょう。

浅草の数ある魅力的な呑み屋、銭湯を華麗にスルー。向かうは稲荷町、新御徒町エリア。アメ横「カドクラ」や「たきおか」のその先に、ちょっと歩くだけで、めっちゃディープな街並みの、日本で一番古いコリアンタウンがあることを知った時、いたく感動したわけです。

で、そこら辺りに目的の角打ちがあるのですが。僕は「良い角打ちはメインストリートに無い説」というのを唱えてまして。先日、神戸の角打ちのおっちゃんも「路地がないと街はダメになる」って言ってて。路地裏の歴史ある小さい呑み屋だったり、古い角打ちだったり、その街の景色を見守って来た店こそが、その街の人と文化を紡いでいると、僕はそう捉えているのです。

上野・御徒町・新御徒町・田原町の各駅から歩いて数分のところにある

「上野萬屋酒舗」に生まれ育った姉妹が角打ちをはじめてから、実はまだ2年ほどしか経っていない。でも創業自体は大正10年代(関東大震災の後)と歴史ありすぎる酒屋だ。もともと配達専門だった店内はいわば倉庫である。こだわり抜いたサーバーから出される生ビールを天井の高い開放感の中で呑む、至福。とともに、店が見守ってきた、この街の歴史の壮大さに思いを馳せる。街の陰も陽も……。

もともとは倉庫として使われているスペース。奥には配達に使う車も
こまめに洗浄されたサーバーから、キンキンに冷えたジョッキに注がれるサッポロ生(300円)

そもそも、昔の酒屋は角打ちが特別なものではなくて、この店にも昔、長い木のカウンターがあったらしい。ただ土地柄、都電の切符で呑ませてくれとか、目を盗んでカウンターの味噌をぺろりとやるおっさんとかが多く、先代中村社長は必ずしも角打ちに良いイメージを持たなかったそうな。なので、先代に反対されるのが目に見えている娘たちは、秘密裏に計画をすすめて角打ちをはじめた! 僕は、この角打ちのそんないきさつを聞いて、なんだか微笑ましくもあったんだけど。

手作りのつまみは全品300円。炭酸にこだわった角ハイボールや芋・麦焼酎もオススメ
牛タンシチュー(300円)、サッポロ赤星 中瓶(350円)

お、そろそろ、この辺りの商人やサラリーマンたちで店がにぎわいはじめてきたね。ふと見上げると、壁一面に大きな女神様。この店がまた角打ちをはじめたのは、街と商売の神様が大事な役割をこの店に授けたんじゃないかって思ったりもするのだ。紡いでいく役割を。我々はここらでおいとま。

シュルレアリスムな壁画は約30年前に近くにある東京芸術大学の学生が描いたもの
大きな壁一面に描かれた絵をぼんやり眺めながら呑んでいると、時間が経つの忘れてしまう

上野萬屋酒舗
住所:東京都台東区東上野1-25-8
電話:03-3831-3900
営業時間:平日14:30~19:00
休業日:土曜・日曜
https://www.facebook.com/uenoyorozuya

90年以上の歴史をもつ酒販店。戦後しばらくは角打ちも行っていたが、その後は配達を主とした営業に。2年前に娘の今井さんが角打ちをはじめたのは「若い人に美味しい生ビールを呑んでほしい」という想いから。ランチタイムには弁当も販売していて、牛たんシチューや餃子など手作りのつまみも食べられる。

三軒目 酒のフタバ

それでは今日最後の店に行きましょう。

蔵前方面にに少し戻るとその店はあるのです。

午前11時から酒販店として営業しているお店だが、17時から角打ち営業が開始

え、普通の酒屋じゃないかって? まぁ、中に入ってみなよ。店頭の電光掲示板が程よく光り始める夕方頃、その一見普通の街の酒屋は、酒呑みの天国に変貌するのだ。

入口付近は思いっきり普通の酒屋さん風情だが、奥に進んでいくとフロアの色が変わり…
酒屋の奥に、酒瓶に囲まれた立ち呑みスペースが広がる!

「酒のフタバ」は、僕が角打ちにハマりだした最初の頃に訪れた店なんだけど、ある意味「角打ち」に対してのイメージを崩されたというか。上野萬屋酒舗が角打ちとしての歴史を繰り返す「必然」にも、通ずるところがあるのだけど。ここは現代の「角打ち」という定義を更新している店なのです。

この時代に角打ちがある理由。

来てみればわかる。ここの値段と質のクオリティーは異常。でもこの店の魅力の本質はそこではないと思っている。

豚のど軟骨スモークスライス(420円)、鯨さえずりベーコン(980円)
乾きものや缶詰類も充実。たとえばツナ缶(200円)などはお好みで調味料を出してくれる

「酒」が「人」と寄り添っていくのは、きっと酒屋さんからしたら色んな問題があって。

一歩間違えば、「酒」は悪いものになってしまう。また我々消費者から見えにくい(気づかない)ところで、税とか法律の問題が日々変わっていってしまう。それは大変なことだ。だけど、きっと誰かが闘っている。楽しく僕らが呑めるように。

新しい「酒」と「人」との付き合い方を誰かがやらなきゃいけない。みんなが楽しく呑むために。

超お得すぎる「センベロセット」も!
開店1時間も経たないうちに、この賑わい

こんな入りやすい角打ちないし、この店の「酒」への愛が溢れているのは、日本酒や焼酎の品揃えで一目瞭然なんだけど。なにが凄いってね、この店は「人」に「酒」を向き合わせることを普通にやっちゃってること。この店に行く度に、僕は酒を一段とまた好きになっている。これは「酒屋」にしかできないことだし、「酒屋」ってかっこいいなって思ってしまいますよ。お見事。これぞ、現代の「角打ち」だ。

酒のフタバ
住所:東京都台東区蔵前4-37-4
電話:03-3861-1138
営業時間(角打ちコーナー):月曜~土曜17:00~22:00(L.O.21:30)
休業日:日曜・祝日
http://futaba.la.coocan.jp/

戦後は炭酸飲料を作る工場を営んでいたが、後に酒屋へ鞍替え。角打ちが復活したのは3年前。豊富な品揃えに加え、おつまみ類の充実が好評を呼び、立ち呑みスペースも徐々に拡大。蔵元を招いた日本酒の試飲会を月イチで行うなど、ただ酒を呑ませるだけでなく、酒の楽しみ方を伝えたいという気概にあふれたお店だ。

銭湯もそうなんだけど、その場所がその街に必要とされている理由がある。

悲しいかな、文化っていうのは何かが更新されないと、廃れていってしまうことが多い。でも、不思議と「角打ち」は、減ってるけど増えてもいる。古いものを愛する人がいる。新しいものをつくる人がいる。『「角打ち」は現在進行形で更新されてる文化!』ってことに気づいた時、なにかが変わったんだ。それは僕の中で、レコード屋まわる感覚とちょっと似てて。刻まれた古い大切な空気を探す楽しさと、新しく刻まれていく今の表現を感じる楽しさ。そのつながりを見つけるのは自分のセンス。

「かどうち」でも「かくうち」でも、なんでもいいよ。その場所がいい!と思ったら何回も足を運んでほしいのです。まずは行ってみよう! この進行形の文化を楽しもうぜ!

てことで、まだもう一軒行きたい気分。 行きますか? すぐ近くに、もう一軒、ヤバすぎる角打ちがあって……。

(続く?)

角打ちon the corner

6月17日(土)@上野萬屋酒舗
12:00~17:00 チャージフリー
DJ:MOODMAN/やけのはら/角張渉/Sports-koide/Minoda/mantaschool(MC.sirafu)

Profile

mantaschool (a.k.a MC.sirafu)

片想い、ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり。『in da house』「角打ち ON THE CORNER」主催。 犬と角打ち愛好家。

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