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長尾謙一郎×テンテンコ:こどもでオトナな2人の創作談義

2016年6月よりトイズファクトリー所属となり、12月には1stミニアルバム『工業製品』をリリースしたテンテンコ。今回、「くるま」と「次郎」のMVが公開され、話題を博している。その制作秘話を、テンテンコとアートディレクターを務めた漫画家・長尾謙一郎が明かす!

text 飯田ネオ edit 奥村健太郎 photo 谷浦龍一

2013年にアイドルグループBiSに加入し、2014年のBiS解散と同時にソロ活動へと移行したテンテンコ。DJをはじめ、自らグッズをデザインするなど、幅広い活躍を見せている彼女の新作MVが話題を呼んでいる。

2016年12月14日にリリースされたテンテンコ1stミニアルバム『工業製品』から、相次いでMVが発表された「くるま」と「次郎」。「くるま」がハイエンドな映像美で、車中での妖しげなサスペンスムービーに仕上がっているのに対し、「次郎」はその真逆ともいえる子ども向け教育番組のようなポップな世界観が広がる。

いずれもアートディレクターを務めるのは、『おしゃれ手帖』や『ギャラクシー銀河』、未完に終わった『クリームソーダシティ』といった作品で知られる漫画家の長尾謙一郎。長尾はこれまでもworld’s end girlfriend「ゆでちゃん」のジャケットや、映像制作ユニット・AC部と共にgroup_inouのMV「ORIENTATION」を制作するなど、音楽分野とのつながりも深い。

トイズファクトリーにおけるテンテンコのビジュアルを一手に担ってきた長尾は、どのように本作を手がけたのか? その内実を聞いた。

「前衛的」と評されてきたふたりの出会いは大喜利イベント

――おふたりの出会いは?

長尾謙一郎(以下、長尾) 去年(2015年)の12月に、ある漫画家さんの単行本発売イベントがあったんですけど、僕もテンテンコさんもゲストとして呼ばれていて、そこで出会ったんです。

テンテンコ(以下、テンコ) お題を出されて大喜利をするっていうイベントで、周りが漫画家さんばかりの中、なぜか私ひとりアイドルという…。そのとき、長尾さんと席が隣だったんです。

長尾 僕、イベントがあまりに眠たかったんでテンコさんの肩に頭を置いたり、髪の毛触ったり、耳を凝視したり、つまりセクハラまがいなことをやってたんですよ(笑)。そしたらファンの方が(歯を)ギリギリギリって…(笑)。

――そこから一緒に制作を始めるまで、どういう経緯があったのでしょう?

長尾 そのイベントの終了後に、テンコさんから音源をもらって、よく車内で聴いてたんです。ハルメンズのカバーCD 。で、あるときテンコさんからメールが来て「長尾さん、ちょっとアートディレクターをやってもらえませんか」って誘われて。

テンコ 2015年の冬にトイズファクトリーに入ることが決まって、話が具体的に進んでいくときに、「アーティスト写真とか楽曲のジャケットとか、誰かお願いしたい人はいますか?」って聞かれたんです。その時、最初に名前が挙がったのが長尾さん。私だけじゃなくて、トイズファクトリーのスタッフさんも同じことを考えていたんですよ。

長尾 光栄です。僕、実は何年か前からアイドルのプロデュースみたいなことやってみたかったんですよ。だから、やっぱり夢って叶うね~。あ、一応テンコファンのみなさまに言っときますけど、アートディレクターになってからはセクハラまがいなことは決してしてません(笑)!

テンコ トイズファクトリーに所属してから初めてリリースした『放課後シンパシー』のジャケットやMVは長尾さんです。アーティスト写真も長尾さんに作ってもらいました。

サスペンステイスト溢れる「くるま」のMV

テンコ 「くるま」はMVとしての完成度が高いんですよ。いいカメラを使ったんですよね。

長尾 そう。スーパースローカメラでね。サスペンス映画によくある、わざとらしい雰囲気ってあるじゃないですか。あ、これスタジオで撮ってるなってわかるような。ヒッチコックとかゴダールの作品に多い手法なんですけど、それがすごく好きだったんです。だからその雰囲気を表現できたらいいなって。シンディシャーマンよろしくシュミレーションしてみました。

――スタジオで撮ったんですね。

長尾 そうです。ストーリーで言うと、車のなかで殺人事件が起きてるんですけど、果たして現実なのか夢なのかわからないっていう。

テンコ 黒沢清さんの映画を観て、漠然と「車の中で撮りたい」って言ったんですよね。偽物の景色で、不穏な空気が流れていて、でも出てくる人はワクワクしてる…。そのちょっと狂ってるような世界観がかっこいいんじゃないかなあと。鳥が飛ぶシーンは外で撮ったんですけど、かなり雰囲気がありましたよね。

長尾 「くるま」は、BOREDOMSの∈Y∋さんのノイジーな音がかっこいいんですよね。∈Y∋さんは日本のカルチャーのラスボスみたいな人なんで、こんな型ですが出会えて嬉しかったなあ。個人的に、実は対決した感がある。

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