• |

音楽偏愛家 Vol.1 カセットテープ収集家・”Dirty Dirt”戸田岳志

たとえミュージシャンにあらずとも、常人とは別次元の熱量で音楽を愛する人々をフィーチャーする「音楽偏愛家」。第1回を飾るのは、カセットテープ収集家の”Dirty Dirt”こと、戸田氏。現在、西荻窪の古本屋で店長を務める彼は、世界中でリリースされているカセットテープの音源を収集し続けてきたコレクターだ。
職場から徒歩15分ほどの距離にある自宅には、無数のカセットテープがうずたかく積み上げられており、中には1本数万円もするレア音源もあるとか。「Apple Music」や「Spotify」などといったサブスクリプション・サービスが音楽業界を席巻している今、CDよりも入手しづらく、劣化の激しいカセットテープに戸田氏がこだわり、掘り続ける理由はどこにあるのか。 彼を狂わせたカセットテープの魅力について、大いに語ってもらった。

text_Takanori Kuroda edit_Kentaro Okumura photo_Kazufumi Shimoyashiki

懐古趣味ではなく、あくまで音楽を追うためのツール

――どんなきっかけで、カセットテープの道に入っていったのでしょうか。

もともとCDやレコードを買うのが趣味で、10年くらい前にフィンランドのフォークミュージックにハマって。彼らは音源をカセットテープでもリリースしていて、当時渋谷にあった「Warszawa(ワルシャワ)」というレコード店に、そういった音源がちょこちょこ置いてあって、そこで買い始めたことがきっかけです。それ以前も、例えばパンクやハードコアの人たちは、流行とは関係ないところでカセット文化を継承していたと思うんですけど、僕がカセットを買い始めた頃には、いわゆる実験的な音楽を作っている人たちもカセットテープで作品を出し始めていたんですよね。それがおもしろくて、集めているうちにどんどん夢中になっていきました。

――どういった部分に魅力を感じたのでしょうか。

中目黒にカセットテープ専門店の「Waltz」が出来たり、家電蒐集家の松崎順一氏が主宰している「DESIGN UNDERGROUND」がBEAMSでラジカセの展覧会を開いたりと、いま日本でカセットテープが静かなブームになっていますよね。昔のラジカセとかテレコの造形も含め、どちらかというと「懐かしさ」とか「レトロ」というイメージで捉えられていると思うんですが、僕の場合は、あくまでリアルタイムでリリースされている音源に興味があって。「カセットテープが好き」というよりは、「カセットテープで出している音楽が好き」というか。なので、カセットの音質が持つ「あたたかさ」とか「ぬくもり」とかには、さほど興味がないんですよね。

――日本以外の国では、カセットテープのブームってどのように始まったのでしょう。例えばアメリカだと?

アメリカでは、カセットテープの文化が途切れることなく続いていたと思いますよ。これは「Warszawa」のスタッフから聞いたのですが、アメリカ人の方って、ボロボロになるまで車を使い倒すじゃないですか。カーステのデッキもずっと搭載したままで(笑)。それで音楽を聴いているから廃れないらしいんですよね。もちろん、データでのやり取りが主流になってく中で、あえてカセットテープで出すことをおもしろがっている人もいるだろうし、気軽にリリースしやすいというのもあると思います。CDだとプレス工場へ持っていかないと作れないけど、カセットならマスターテープさえあれば、自宅でダビングできますしね。

棚には韓国のポップアーティスト・f(x)のテープも。「好きすぎてアルバム・ジャケットを印刷して、勝手にカセットテープで出したことにしてしまいました。ポスターも飾ってます」
次のページ50本のカセットが30秒で完売。もう二度と手に入らないテープ

Latest