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「少しだけ楽になりました」映画『この世界の片隅に』、ドラマ『100万円の女たち』を経たコトリンゴの現在

光のキラキラ、水面のユラユラと共演したMV

――そんな「漂う感情」のミュージックビデオは、ドラマEDのミステリアスな映像とは真逆とも言えるアプローチで、心洗われる澄みきった仕上がりですね。

監督はいすたえこさんと、たなかともみさんです。光の反射とかキラキラ感、水面のユラユラ感にこだわってました。きれいに表現してくださったなあって。

――撮影現場ではこの“揺れ”をどのように表現したんですか?

私がピアノを弾いてて後ろで光がユラユラしてる場面は、照明さんがアルミホイルみたいなのを持ってうまく光を屈折させてました。暑そうだった…。窓にスクリーンを張って窓の外から照明を当てたり、カメラのレンズに水で濡らしたアクリル板を差し込んだり、意外と編集ではなくアナログ的な手法でしたね。あ、ここ【※ベッドで寝ているシーン】、私ガン寝してたんです(笑)。

――え!?(笑) きれいな顔で寝ますね…。

あまりに本意気でガン寝してるところはカットしてもらったんですけど(笑)。

――また、衣装と小物はすべてファッションブランド「YUKI FUJISAWA」のものだそうですね。

アトリエにお邪魔したら、すごいかわいいものがいっぱいでした。監督のお2人から「イメージは白の服」と聞いてたので、ヴィンテージの白いお洋服と、それに合いそうな小物を選ばせてもらって、YUKI FUJISAWAさんが撮影までに(白いワンピースに)箔を入れてくださいました。花のピアスもかわいいですよね。

『この世界の片隅に』以後は少しだけ楽になった

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――今現在、コトリンゴさんを取り巻く状況には『この世界の片隅に』が大ヒットした影響も間違いなくあると思いますが、ご自身の感覚では何か変わりましたか?

少しだけ楽になりました。

それまで、(コトリンゴについて)名前は知ってもらっているけど曲はそんなに聴いてもらってないんだろうなっていう前提で話したり、いろんな場に出たり…それが普通だと思ってたんです。けれど、多くの人が『この世界の片隅に』を見てくださったことで、私の曲や歌声を知って、興味を持ってくださってるケースが増えたので、今は少しだけ楽な自分でいられるっていうか。

その点では以前よりも力を抜いていて、素直にうれしいなと思ってます。

また時間が経つと忘れ去られちゃうかもしれないですけど(笑)。今は映画の魔法が効いてる時期なので、ありがたいと思っています。

――いやいや、コトリンゴさんはずっと求められていますよね。ご自身のオリジナル制作、ライブに加えて、劇伴、コマーシャル、他のアーティストへの楽曲提供、KIRINJIのメンバーとしての活動、トイピアノカルテット・toi toy toiの活動など、さまざまなモードの音楽活動を並行してこなしていて本当にお忙しいと思います。

自分の名前を冠して出すものは、わりと伸び伸びやらせていただいてる気がするんですよ。今回の「漂う感情」もそうですし、CMのお仕事とかサントラとか、オーダーされて受け身の状態で何かをこなすのもそんなに苦ではなくて。

だけどKIRINJIやtoi toy toiの場合、自発的に働きかけつつ、オーダーにも沿いつつ…というバランスが、自分1人のプロジェクトとは全然違うんです。気持ちの整理が難しいというか。「人とうまくやる」「みんなの中でやる」っていうのは刺激でもあり、自分なりの課題でもありますね。

――では、ご自身のオリジナル曲は“一番やりたいことができる自由な場所”という位置付けなのでしょうか?

「制約がなく、なんでも作っていい」ってなると、荒野に解き放たれたようで、まず手がかりを探しちゃうんですよね。欲も出てきちゃう。自由が一番大変、みたいな感じもあります。

作家的な仕事もやらせてもらってるから、それぞれモードの切り替えが必要なのかもしれないですね。今は自分の制作に集中しようとしているんですけど、夏にかけてイベントが多くて毎週末ライブをやってます。

――そのタフネスの源とは?

どのプロジェクトでも、もがき苦しみながら作ります。けど、できあがったものを聴くとやっぱりすごくうれしいんです。そのうれしさや喜びが「やってよかった」って気持ちに変わる。その繰り返しで、ずっと進んでいる気がします。

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Profile

コトリンゴ

音楽家

5歳からピアノ、7歳から作曲をはじめる。

神戸・甲陽音楽院を卒業後、ボストン・ バークリー音楽院に留学し、ジャズ作曲科、パフォーマンス科を専攻。学位を取得後、ニューヨークを拠点に演奏活動を開始。

2006年、坂本龍一に見い出され、シングル『こんにちは またあした』で日本デビューを飾る。以降、現在までに9枚のソロアルバムを発表。

2016年11月に公開し、ロングヒット上映中のアニメーション映画「この世界の片隅に」の音楽を担当。第40回日本アカデミー賞優秀音楽賞、第71回毎日映画コンクール音楽賞、おおさかシネマフェフティバル音楽賞を受賞。

映画、アニメのサウンドトラックや多数のCM音楽を手がけるなど、クリエイターからの支持も高い。

卓越したピアノ演奏と柔らかな歌声で浮遊感に満ちたポップ・ワールドを描くアーティストとして活躍中。

http://kotringo.net/

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