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Webでも話題を席巻中!『そうして私たちはプールに金魚を、』は、どうつくられたか

インディペンデント映画賞の最高峰と言われる「第33回サンダンス映画祭」のショートフィルム部門で日本映画初のグランプリを受賞し、話題を集めている短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』。東京・ユーロスペースでは4月8日から14日まで1週間限定レイトショーにて公開され、上映期間中は連日トークイベントが行われた。

この記事では4月13日の回の模様をレポートする。登壇者は、本作監督の長久允、『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』などで知られる映画監督の松居大悟、コピーライターの阿部広太郎、スペースシャワーTVの高根順次の4人だった。現在はvimeoにてWeb無料公開の英断を行ったことでも、話題の本作について、当日のトークを紐解きたい。

『そうして私たちはプールに金魚を、』は、2012年夏に埼玉県狭山市の女子中学生4人が、学校のプールに400匹の金魚を放流した実際の事件をモチーフにした作品。「キレイだと思って」と供述した15歳の少女たちがプールに金魚を放った本当の理由やその心情を、長久監督がエネルギッシュな音楽と刺激的なモチーフの連続で映像化した25分間の作品だ。

キャストには湯川ひな、松山莉奈、西本まりん、菊地玲那、山中崇、黒田大輔、クリトリック・リス、NATURE DANGER GANG、フジロッ久(仮)の藤原亮と高橋元希(元メンバー/2016年に脱退)らが名を連ねる。ユーロスペースでの上映は、受賞の影響もあり連日満員で追・追加上映が決定するほどの盛況ぶりだった。

本作監督・長久允

監督と脚本を担当した長久は、今作を作るきっかけとして、事件のニュースを見た際に「プールに金魚が泳いでいたらキレイだろうなと思った」という彼女たちの動機が気になったと話す。「(金魚を)放った理由はもっとノイジーで、この1行以外に100個ぐらいあると思うし、本人たちも気付いてないことがあるだろうから、そこをすくって物語にしてあげたいなと思った」という。

アドリブは一切なし、台詞を決め込んでから絵を考えていった、オマージュを込めて大島渚監督による『日本春歌考』の女性版のようなつもりで作った、などの製作秘話もトークセッションの中で明らかになった。

映画監督・松居大悟

本作は、田舎に住む女子高生4人のリアルな姿と思春期ならではの激情を描いたという点で、松居が監督した『私たちのハァハァ』と比較することができる。この日のトークイベントはそんなテーマが設けられ、『私たちのハァハァ』でコピーライターを務めた阿部や同作プロデューサーの高根もキャスティングされた。ちなみに、長久は広告代理店のCMプランナーとしても活動しており、阿部は会社の後輩でもある。

松居は『プー金』と『ハァハァ』の共通点に、「4人の女子学生」「夏」「濡れているシーン」「手持ちカメラなどを用いた生々しい撮り方」を挙げた。

それに対し、長久は「(今作の)ロケハンをしてたときに(『ハァハァ』を)劇場で見て、モチーフが近いから意識しないようにしようと思いました」と返し、「(『ハァハァ』で描かれている)“好き”に対する熱量とは反対の、日々の苛立ちに対する熱量で女の子たちが動いている」といった両映画の相反するポイントも話していくうちに浮き彫りになった。

スペースシャワーTV・高根順次

4人は「どっちの作品も女子中高生たちは結局成長していない」「ムダがテーマ」との論を交わしつつ、高根から次の問いが投げかけられる。「これはサンダンスでグランプリを獲り、『ハァハァ』は海外審査員にはあまり受けなかった。何が違ったんですかね?」。

長久は「ローカル性への共感度が高かった。世界全体で都市出身の人は10%くらいしかいなくて、90%くらいが地方なので、ロスやパリに出れない地方の人たちが『埼玉は知らないけど、この(閉塞的な)気持ちは私たちの中にある』と言ってくれた」と分析する。

コピーライター・阿部広太郎

また、阿部は「長久さんが日々の仕事で溜めてきたフラストレーションをこの映画で爆発させて、それが1つの表現になって今すごく注目されてるのがうれしい」と同僚ならではのコメント。

長久はこの10年、台詞や好きな言葉を思いついたらケータイに書き溜めており、この「10年分の自分の好きなものが詰まっている」作品で予想以上の反響を得ていることに喜びを隠せない様子だった。脚光を浴びている今、次回作以降については、やりたい企画がすでに5〜6個あり「映画が一番好きだけどこだわってはいない」と映画化やドラマ化を考えているという。短編映画デビュー作にして日本人初の快挙を成し遂げた彼が、今後の映画界でどんな活躍を見せてくれるのか楽しみなところだ。

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