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RIP SLYMEになりたくて。chelmicoが歩んできた風景

2014年の「シブカル祭。」のステージで活動を開始したMC RACHELとMC MAMIKOからなるフィメールラップユニット、chelmico(チェルミコ)。SoundCloudで初の音源「ラビリンス ‘97」を公開後、ハイスキルかつ肩の力の抜けた等身大のラップスタイルがシーンに受け入れられ、2016年10月には1stアルバム「chelmico」をリリース。他愛もない話をするのと同じように、“ただ好きだからラップする”彼女たちのルーツに迫るべく、幼少期や出会い、楽曲作りについて聞いた。

text_奥村健太郎 photo_谷浦龍一

二人をつないだ「黒人メイクの名残」、「イカの角」、「RIP SLYME」

——お二人はどんな子どもでしたか?

MC MAMIKO(以下M):幼少期はものすごく泣き虫で人見知りでした。めっちゃ真面目で、自分の意見を言わないタイプ。マーチングバンドでトロンボーンを担当したり、ピアノも習ったり、けっこうお嬢だった(笑)。

RACHEL(以下R): 19歳くらいまではずっと横浜に住んでました。クラスの中では、ピザでいうとたぶん「耳」の部分。多動だったのか落ち着きがなくて、授業中に突然教室の外に出たり、ずっと図書館に篭ったりとかしてましたね。そのときにやりたいことを優先してどっかいっちゃう子でした。

M だいぶ不思議な子だったんだね。

R わけわかんない子って思われてたと思う。通知表には「授業態度に波がある」って書かれてたしね。勉強は好きなとこだけ頑張って、その部分だけ点数がよかった。なぜか英語の授業だけ顔パスだったなぁ。

M 顔パス?

R 授業中は寝てたし、テストもできなかったけど、なぜか成績がよかったの。これって顔パスでしょ?

RACHEL
RACHEL

——お互いの第一印象について教えてください。

M 14年くらい前に西日暮里のマックで出会ったんだよね。共通の知人の撮影のモデルとして。

R まみちゃんは私を待ってたよね。私はその日、サロンモデルをしたあとだった。

M そうそう。RACHELは黒人に扮する設定だったらしく、首にまだ黒い化粧が残ってた。私、それ見て「こいつ絶対イイやつだなー!」って(笑)。私のおもしろポイントを一気にかっさらっていった。

R アハハ。でも、まみちゃんだってすごかったよ。その共通の知人は「角をつけて写真を撮る」という創作活動をしていて、だいたいみんな鹿とか鬼の角をつけてたんだけど、まみちゃんだけ「イカ」をつけてたんです(笑)。

M いや、あれは選んだ人がすごい適当だったんですよ!「釣りで使うイカが余ってるからこれでいい?」って言われて…。

R 委ねたらイカだったんだ(笑)。まみちゃんが希望したのかと思ってた。あのとき「こいつヤバイやつだ」って思ったんだよね。

M 黒人のメイクの名残とイカ。わけわかんない(笑)。

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R それがきっかけで会って、2人で西日暮里の街で撮影しつつ、話ながら買い食いしたりしてね。あの時から波長は合ってたと思う。

——音楽的な側面で二人を結んだのは「RIP SLYME」だった?

M そうですね。私は小学2年生のときに、あるフェスに偶然通りかかって、生音の「楽園ベイベー」を聞いて涙を流したのが最初。その後ラジオで「SPEED KING」を聞いたり、Mステに出ているのを観て徐々に「このかっこいい曲はRIP SLYMEの曲なんだ」って認識していきました。あと、歳の離れた兄がヒップホップがすごく好きで。RIP SLYMEはもちろん、KICK THE CAN CREWのアルバムを持ってたから、借りて聴き込んでました。

——RACHELさんとRIP SLYMEの出会いは?

R 小さい頃可愛がってもらってたお姉さんが爆音でかけていたのがヒップホップだったんです。「こんな早口の音楽ってあるんだ」ってびっくりした(笑)。そのときからすごく好きでしたね。歌詞を自由帳に書いてもらって、めちゃくちゃ練習して全部歌えるようになって。

M でも、一番大事なのが、2人とも「RIP SLYMEの夢小説(※1)を読んでた」ってことが分かって、めちゃくちゃ盛り上がったこと。RIP SLYMEが好きな人ってけっこういるけど、私たちはもう一段階上で、彼らをアイドル視してたんですよ(笑)。それくらい、もうめちゃくちゃ好きだった。

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MC MAMIKO

※1…ウェブ上で公開されている、特定の登場人物の名前を読者が自由に設定して読むことの出来る小説のこと。「ドリーム小説」とも。

chelmicoをつくる「もと」になるもの

——リリックはどんなふうに書いているんですか?

M 公園が多いかも。

R うわ〜、ちょっと作家っぽいね! 私は電車の中でiPhone使ってメモすることが多いかな。最初にトラックを聞いて、入れたい単語を普段ストックしてるメモからノートに手書きで書いて、それを頭で覚えて、なんかこうごちゃごちゃっとして、電車でまとめる!みたいな。

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M なんだよそれ(笑)。私、毎回違うんだよね。曲によってパっと書けるときもあれば、ムズムズってしちゃうときもある。トラックと気分によるかなぁ。冬は書けない。

R あ、そうなの? 私は冬の方が書けるかも。

M 冬はchelmicoじゃなくて、ソロの曲を作りたいんですよ。ソロの曲に気持ちが向いちゃうと、chelmicoの時に集中力が切れちゃって。

——リリックのもとになるインプットは何ですか?

R 映画とか本。あとは普段目にして気になったことをメモしたり。映画のセリフは、単語でいい響きがあったりすると、そのまま入れたりもします。

M インプットかぁ…なんだろう。人と会うこと、会話することかな。私は映画を観ても歌詞にはならないな。というか、何からインプットしてるのかわかんない(笑)。

R まみちゃんは普段からいっぱい吸収してるから、無意識のうちに反映されてるんじゃないかな。

——曲やアルバムを作るプロセスを教えてください。

R トラックメイカーの方から「こういうのやってみたら?」って、挑戦状みたいな感じでトラックが送りつけられてくるんですよ。

M それに対してやれるわ!って、半ばムカつきながら作ります(笑)。

R うん、トラックがある分だけ作るって感じだよね。曲に関しては受け身なのかもしれない。

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M 曲をもらったら、とりあえず作っちゃう。(その曲を)自分たちでどんなふうにまとめるかとかはあまり考えないよね…(笑)。

——では、10月にリリースしたアルバム『chelmico』の聴きどころは?

M 聴きどころ? 全部です。

R いろいろな曲が入ってるのがいいかなって。トラックメイカーの方がバラバラだから、テイストが全曲違うんだけど、私たちがラップすることによってちゃんとchelmicoになっている、というか。

M あと、流れが良いから、最初から最後まで通して聞いてほしいね。

R あ、わかる!トータルで30分くらいしかないしね。

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