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シリアからベルリンへ渡り、音楽活動を続ける難民ミュージシャンを追ったドキュメンタリー作品を公開。シリアからの壮絶な渡航、戦争が続く祖国への思いと葛藤、それを抱えながら自分らしく生きたいと願う「今」から生まれるものを、現地に滞在している映像作家・中島悠が半年かけて撮影した。

text_lute編集部

「自由」への片道切符は、ネットで見つけた密入国業者から買った550万円の小舟

シリアでは18歳になると軍隊に入隊することが義務付けられている。国に残って軍に入るか、祖国を離れて難民になるか。2つの選択肢を目の前に、パーカッション奏者のアリ・ハセンは戦禍から離れ、自分自身として生きるために難民になることを選択する。

亡命資金を稼ぐため、トルコへ渡って昼はマッサージ師、夜は音楽活動で日銭を稼ぐ生活を続けること5ヶ月。ついに国外脱出資金を手にいれた彼は、インターネットで見つけた密入国業者に1人につき1200ユーロ(日本円で約14万円)を支払い、仲間40人が乗れる小舟を手にいれた。

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小舟1隻を目の前に、密入国業者は「あの島がギリシャだ」と指差すだけ。仲間40人を乗せた小舟は自らの手で操縦しなければならなかった。生死の境目を彷徨うように地中海を渡り、運良くギリシャへ辿り着いたものの、そこからさらに密入国業者をネットで探して国から国へと路上で寝泊まりしながら渡り歩かねばならない日々を送る。

本作では、「自分らしく生きる」という当たり前の権利も、そのスタートラインに立つことすら難しいシリア難民の苦悩が垣間見れる。

祖国の平和を望むシリア難民が終着地に「ベルリン」を選んだ理由

シリアと違い、ベルリンは全てが新しく見える魅力的な街で、彼が受けたカルチャーショックは相当なものだった。街並みや交通機関、システムや政治…これだけではない。シリアには資本主義も民主主義ももはやないも同然だったからだ。

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ベルリンは、彼が奏でる音楽や愛する文学を通して、街の人々が強くつながることが実感できる本当に美しい場所だ。しかし、彼が語る「人生は本当に美しく、本当に難しい」という言葉には家族を残した祖国シリアへの諦めきれない思いも滲む。

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シリアから亡命した彼にはベルリンに対するひとつの思いがあった。それは、ドイツが第二次世界大戦という大きな戦禍を経て、今ではこんなにも芸術的で魅力的な街へと復興を遂げたということ。「シリアで起こっている戦争を止めて、何もかもやり直したい」。これが、亡命せざるを得なかった難民の心から離れない言葉だ。

<Credit>
Ali Hasan
Director and Producer: Yu Nakajima
Co-Director: Rafi Gazani
Camera: Masaya Kato, Yu Nakajima
Opening Timelaps: Masaya Kato
Opening Track: Chikara Aoshima
Translator: Kosuke Kitakoga<Thanks>
Dancers:
Medhat Al Daabal
Moufak Al Daabal
Fadi Waked
Singer: Ahmad Nieo
Darbuka : Mohammad Abu Hajar
Violin : Zaher Alkaei
Oud : Alaa Zaitouna
Dj : Matteo Guglielmo

アーバンカルチャーの最前線を切り取る映像作家・中島悠の「FROM BERLIN」

luteでは今回配信となる難民ドキュメンタリー映像の他にも、映像作家・中島悠がベルリンの前線カルチャーを切り取る「FROM BERLIN」シリーズとして「NIK NOWAK」を公開している。

第2次世界大戦時の音響兵器から着想を得た巨大な戦車型可動式音響システム(サウンドタンク)や、脳の中で音が鳴るように設計された音響装置、インスタレーションをはじめとするアート活動や音楽制作を行うベルリンのアーティスト、NIK NOWAK(ニック・ノヴァック)。

歴史と自然を紐解いて「音の現象」をテーマに作られるこれらの音響システムは、どこで使われ、何を思って作られるのか。ベルリンを舞台に繰り広げられる「音の現代アート」に迫るluteオリジナルのショートドキュメンタリー映像だ。

▶︎ FROM BERLIN ドキュメンタリー「NiK」: part1

▶︎ FROM BERLIN ドキュメンタリー「NiK」: part2

YU NAKAJIMA Profile

富山県出身。映像作家、ドキュメンタリアン。2010年に単身渡米。長編ドキュメンタリー映画「ハーブ&ドロシー2 ふたりからの贈りもの」の制作に関わるなど、ニューヨークを拠点に、監督、撮影、照明、音声、プロデュースと様々な形で映画、広告、Music Videoなどを中心に活動を行う。2015年よりベルリンでの活動を開始。活動拠点を東京とベルリンに構え、物語を紡ぐ人たちと一緒に旅を続けている。撮影を手がけたショートフィルムは様々な国際映画祭での受賞歴がある。

YU NAKAJIMA 公式WEB : http://yunakajima.com

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